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2010年02月13日

日経の新聞奨学生になった理由を、同級生は嘲笑ったが……

もう20年も前になるが、私は新聞奨学生だった。

その時と、全く同じ問題が、今でも続いている事を以下の記事で知った。

苦学生をうつに追い込む!?不況で希望者殺到「新聞奨学生」の実態

だが、それほどの驚きはない。

むしろ、内容がそれほど悪化していない事のほうが意外だった。

大きな驚きを感じたのは、20年前とは経済状況も違い、社会は厳しいものだしアテにならないものだという事を肌で感じていてもよさそうな学生側、親の側の考え方が変化していない事だ。


私が新聞奨学生になると決めたとき、同じように新聞奨学生となって大学や予備校に行く事にした同級生が数名いた。

私は妙なところで達観したようなところがあり、特に商売をする大人の言う事や書く事には裏があると考えるガキだった。

新聞奨学生を募集している新聞社の中で、どれを選ぶかが重要だと考えていた私は、朝日と読売と毎日と日経の資料を一瞥しただけで、即座に日経が良さそうだと感じた。

理由は、「集金業務は必須」と明記してあったからだ。

当時、朝日、読売、毎日は「集金作業の必要ないコース」を設けて多くの学生を集めようとし始めた頃だった。これに素直に釣られてしまった学生が大勢いたのだが、実際は冒頭に紹介した記事の通りである。集金が無いコースを選んで低賃金になっているにも関わらず、集金業務に駆り出されていた。

私は、この「集金業務を免除するコース」を怪しいと思っていた。

誰もが嫌がるからこそ、これは学生集めの切り札になるのだが、集金は誰かがやらなくてはならない。

そのシワ寄せは必ず世間知らずの学生にやって来るだろうと予想しておかないと騙されると思っていた。

当時はインターネットも無く、気楽に評判を調べることも出来ない。

パンフレットを丹念に読んで行くと、日経のパンフレットには、他の新聞社には無いメリットが謳われていた。

それは、「日経新聞だけを扱う専売所」の比率が非常に高いという事だった。

ところが、他の新聞社の場合、配属された店が朝日と読売を扱っているといった事が頻繁に行われていた。

こうなると、新聞社の都合ではなく、販売店の都合で学生を使う側面が強くなるのは予想出来る。

そこで、これはどう考えても集金作業を逃れる方法は無いと覚悟した。

そうなれば、むしろ他の学生が集金を嫌がって、集金免除コースを選ぶ中で、敢えて自分は集金有りコースを選び、きっちりカネを貰う事を狙う方が良い。

そう、覚悟を決めた上で比べると、やはり読売などの方が賃金は高い。

しかし、日経は読売などよりも価格が高い新聞で、収益性も良いはずだから、本来なら日経の方が賃金は高くなっても良いはずだ。

ここで思いついたのが、

集金作業それ自体の負担が、日経と他の新聞では違うのではないかという事だ。

考えてみれば、日経新聞を購読する人というのは絞り込まれた顧客だ。

読売と朝日を比べても大差ないが、日経は違う。日経を取る人には明確な理由がある場合がほとんどだ。

考えてみれば、自宅にも度々新聞勧誘員がやってきて、洗剤やらタオルやらを持って来ては、新聞を変えないかと持ちかけてきていた。

ウザったい勧誘に面倒だと言いつつ、景品がもらえるので何度も新聞の銘柄が変わるという事があった。


これから自分は新聞を配る立場になるのだと思ったら、しょっちゅう新聞を入れたり止めたりする客が居るというのは、かなり面倒だという事にここで気づいた。

日経新聞の場合は、このような銘柄のチェンジが頻繁に起きることは無いのでは?と、思いついた時点で謎が解けた。

やはり、読売などで高い値段が提示されているのは、それだけ大変だからだ。

例えば、通常200軒を配る事になっていても、勧誘が多い時にはこれが急に増えたり、また途中で止める客も居る。

毎日、新聞を入れる家が変わるという難しさが出てくるし、集金の時は、途中まで入れていた人のところも回らなくてはならない。

総合計で考えたら、集金に回る件数はかなり多くなる。

これでは日経新聞と同じ賃金を提示するわけには行かないという事になる。


単にカネを稼ぐことが目的なら、忙しくても難しくても賃金が増える方が良い。

だが、

新聞奨学生の本分は学業であるから、勉強出来ないような状態になるようでは意味がない。


ここまで考えたら、結論は見えている。

日経新聞以外の選択肢は無い。

今はどうだか知らないが、当時の日経の新聞奨学生には集金免除コースが無かった。

それを見た瞬間に、私の同級生たちは、日経のパンフレットには見向きもしなくなったが、

私はそこが気になった。だから、気づくことが出来た。


その後、日経新聞を選んだ私を嘲笑う同級生もいた。

「業界最大の読売に比べて、日経なんてマイナーな新聞社を選んぶなんて、意味がわからん!」

とこういう具合だった。

私は私の考えたことを説明して、読売では相当辛い仕事になる可能性があるし、パンフレットに書いてある内容通りにはならないだろうと伝えたのだが、

「あんな立派な会社が嘘をつくワケ無いだろ!」

と耳を貸してもらえなかった。


結果として、私は新聞奨学生を勤め上げつ事が出来たが、同級生たちは数カ月で「話が違う!騙された!」と辞めて行ったという。

予想通り、日経では読者の入れ替わりも少なく、集金もほとんど毎回同じコースであり、しかも予想外だったのは、身元がしっかりした人が多く、集金が比較的スムーズだった事だ。

一度、どうしても集金出来ない癖の悪い客が居た時の事だが、相談した私の目の前で、専売所の所長がその客の勤務先に電話をかけた。

「御社ではどういう社員教育をなさっているのですか?」

と殺し文句一発で、その客は上司と一緒に店まで購読料を支払いに来て、それからはいつも集金がすんなり出来るようになった。

「日経だから出来る裏技だぞ!」

と笑って見せる所長をカッコいいと思ったものだ。


思い出話が長くなってしまったが、

この話、新聞奨学生に限った事ではなく、あらゆる場面で似たような事がある。

大手だから、有名だから、条件が良いから、賃金が良いから。

そういう自分にとって都合の良いところばかりを真に受けてしまうと、相手に都合よく使われてしまう。

ちょっとだけでもいいから、相手の立場になって考えてみればいい。

どうして、他より賃金を高く出来るんだろう?

どうして好条件を提示しなくてはならないのだろう?

その違いはどこから来ているのだろう?

もしもこれが嘘だったら、騙しだったら、自分はどんな損害を覚悟しなくてはならないのだろう?


そうやって考えれば、この手の被害はかなり防げる。

私の家は裕福では無かった。

だから、家族に迷惑をかけたくなかった。

私が窮地に陥れば、親は家を叩き売ってでも私を助けるとわかっていたからこそ、上辺だけの甘い言葉には乗らないように注意していた。

今の日本は、厳しい経済状況なのだから、バブルの余韻が残っていた私の学生時代に比べて、ずっと用心深い人が増えているだろうと思っていたのだが、現実はまるで幻想のように甘かったようだ。

このような記事が出てくる事に軽く驚きつつ、一方で、所詮世の中はそういうもんだなという諦めも感じている。


そういう間の抜けた人の良さは日本の気楽なところでもあるけれど、

時々、あまりにも現実逃避的に見えるときもあり、問題解決への意志の薄弱さを感じる事もあって、イライラする事がある。

まぁ、それも最近では気にならなくなってきた。

所詮他人の事だから、私がイライラしたって仕方ないのだ。

醒めた付き合いしてなくちゃ、いちいち親身になってたらバカを見るだけだ。

親身になる相手はかなり限定して選ばなくちゃと、何故か日本に戻ってから強く思うようになったってのが、なんか皮肉で笑える。


おっと、最後に書いておかねばならない。

日経での新聞奨学生としての経験は素晴らしいものだった。当時の専売所の所長さんや専業の従業員の方々、先輩や同期の奨学生との出会いは私の人生に大きな意味をもたらしてくれた。

しかし、私は日経の新聞奨学生の中でもかなり運が良かったらしい。

私が配属された専売所はしっかりした所長の元、学生を守ってくれる専売所として有名だったらしく、他の専売所の中にはあまり待遇の良くないところもあったそうだ。

また、同期のメンバーも個性的で責任感も強く、あの時期の私にとってベストの環境だった。

よって、ここに書いてある事を元に、

「日経新聞の新聞奨学生なら大丈夫だ!」

とは考えないようにして頂きたい。

重要なのは、各人にとってその経験が価値あるモノとなるかどうかであり、それは自分で真剣に考えない限り見えてこないものだからだ。


<追記>
もしも、今、新聞奨学生になろうとする人が身近に居たら、私はオススメしません。

しなくて良い苦労となる可能性が高いからです。

冒頭で紹介した記事にあるとおり、かなり過酷な仕事です。私のようなラッキーな環境に入れたとしても、勉強はギリギリ出来るぐらいだと思った方が良いでしょう。

それに、今は時代が悪い。

新聞を購読する家庭が減っており、経営が苦しくなっていく販売店。

もう、私の頃のような恵まれた環境を用意出来る販売店があるかどうか疑問です。

もろもろのシワ寄せは必ず一番弱い立場の人間に行きます。

電子書籍も話題になる昨今、新聞配達という職業はますます苦しくなるでしょうから危険度が高い。

もっと実入りの良いバイトを探した方が良いと思います。
posted by 本気らいふ at 04:33| Comment(0) | TrackBack(0) | 成功は体で覚えろ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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