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2009年12月12日

「ギネ」の最終回が突きつけた、今、本当に見なくてはならない現実。

テレビドラマの「ギネ 〜産婦人科の女たち」が終わった。

飛び飛びでつまみ食いをするように見ていて、

「どうせありがちな医療訴訟でドタバタの安いヒューマン医療ドラマでしょ」

と思っていたのだが、

ところどころ、「おや?」と思う展開やシーン、セリフがあって気になっていた。

で、最終回は全部見てみることにしたのだが、

これが非常に良かった

原作 は自身も 産婦人科医 である 岡井崇 さんの

「 ノーフォールト 」(早川書房刊)



非常に鋭いメッセージをもった作品だが、これがTVドラマ化によって、視聴率向けの編集でスカスカにされるんじゃないかと危惧していたのだが、

ラストシーンの気迫あるメッセージに、制作側の勇気を見た思いがした。

主人公である柊医師(藤原紀香)が産科医の居ない小笠原に渡ろうと船着場に立っているところへ、医療現場改革の意欲に燃えて念願の教授となった君島医師(松下由樹)が、ド迫力で駆け寄ってきて、

「小笠原にあなたが行ったら、妊婦さんたちは幸せになれるの?女学生の自分探しみたいなぬるい考え方はやめなさい。」

「もっと大きな視野で考えないと何も問題は解決しない。あなたが島に渡って一人で危ない橋をわたっても何にもならない。」

と、言うのである。

この真っ当すぎるセリフを言わせてしまう医療ドラマがあっただろうか?

通常なら安っぽいヒューマニズムを散りばめた無責任な情緒的ハッピーエンドで、柊医師が島を自転車で走りまわって往診していて、みんな笑顔……といった感じになるのがオチだ。

ところが、この「ギネ」では、真実を語らせる。

「島でお産が出来るようになればそれで良いわけ?
いきなりハイリスクになる妊婦はどうするの?
NICUも無い島であなたに何が出来るの?
そんな危ない橋をわたって患者が死んだら
あなたが殺した事になるわ!」


「輸送手段、人員設備など、行政とも協力しながら総合的に体制づくりをする必要があるわ。」


この当然の事が、しっかりとドラマの中で語られる事には大きな意味がある。

さらに痛快なのは、これだけストレートに言い放った君島教授が、

「私、11時からオペだから!」

と言って走り去るのである。


立ち止まらず走り続ける医師、現実を見据えてブレない強い意志、

それをしっかりと描き出したこのドラマは、少々詰め込み過ぎに感じる部分もあったが原作がもつ問題意識を伝える事を大事にした、意味のある作品だったと思う。

考えさせようとするドラマは多いが、

考えさせられちゃって良かったと思えるドラマは少ない。

広い視野で医療崩壊を阻止するために、仕事をするべきは、現場の医師だけではないのに、

医師に対して過度の献身と自己犠牲と超絶技巧を格安で不眠不休で提供し続ける事を要求するかのような、それこそ非現実的な夢物語がなんとなく蔓延し、

現状では有り得ない解決を求めて思考停止しているような風潮がある。

このドラマでもしっかり指摘されている通り、行政も含めた全体の動き無くして何も解決しないのだ。


行政が連携して動けていないのはなぜだろうか?

そこを動かす立場の人々は、今どこで何をしているだろう?

現場の医師を消耗させてしまった後ではもう遅い。

早急に対処しなくては、もう時間はそれほど残されていない。

さて、病院の外にいる諸先生方……出番ですよ。


原作の文庫版です。



ノーフォールト(上)(ハヤカワ文庫JA)





ギネ 産婦人科の女たち DVD-BOX


posted by 本気らいふ at 02:05| Comment(0) | TrackBack(0) | 評論家の体で | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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